2008年11月15日
有効期限

当店にはエモンズ発見当初から、実に多くの「エモンズフリーク」の方々が来られます。
そんな毎年毎回潜っている方々から、いつも聞かされるのは、「年々朽ちてるね」という意見でした。
久しぶりに潜るからこそ気が付くという事もあるようで、確かに言われてみれば変化しているような・・・。
改めて膨大な数の画像データを見比べてみると、確かに形が変化してきているのがわかるのです。
愕然としました・・・。
そーです、エモンズは年々、いや日に日に朽ちてきているのです。
そんな事で、先日改めてエモンズを違う角度から直接調査してみました・・・。
間違いなく朽ちてきています。
しかもここ2~3年の間にブームのようにダイバーが多く入るようになって一層老朽化が加速しているようなのです。
特に一番金属強度があるはずのハル(船体外壁)自体がベキベキ剥れ落ち、手でも金属がパキッと折れる程になっています。
鉄パイプ類などは、あたかもお麩のように、握るとクシャクシャと握り潰れ崩れていきます。
以前もブログでご紹介しましたが、今年前半には艦橋部分の溶接が外れ、丸く弧を描いていた丸窓付近のRは現在直線状に伸びきろうとしています。
また一般には完全に禁止しているはずの船内部の一部上部には、大量の空気溜まりができている箇所も発見しました。
これは何が懸念される事なのかというと、船体の金属に空気が触れる事で「酸化」を超高速で促進させてしまっているという事です。
ではこの先「酸化」が進むとどうなるのか?
当然重量に耐え切れなくなった部分から崩れ落ち、微妙なバランスでようやく保っている船体自体のバランスが崩れ、ついに全体的に崩壊が始まるのです。
最終的には船の形を留める事が出来なくなり、海底の砂へと同化していく事でしょう・・・。
つまり元々自然に崩壊していく運命である沈没船にここ数年で特にダイバーが拍車をかけ促進させているという図式なのです。
ダイバーから見た沈没船は、ある意味有効期限のあるポイントなのだと改めて痛感しました。
ですが、ですがですよ。
このUSS Emmonsは単なる沈没船ではなく、「戦没船」なのです。
戦争で多くの人間の血と共に沈んだ船なのです。
二十世紀最大にして最悪といわれた太平洋戦争の遺品そのものなのです。
将来への平和祈願の象徴として、後世にも残すべき必要な象徴物でもあるし、ここで亡くなったアメリカ兵たちの墓標そのものでもあるのです。
本来、アメリカ本国のUSS Emmons遺族会」でも、この墓標であるエモンズにダイバーたちが単にレジャーとしてダイビングを行う事を当然快くは思っていません。
だからこそ、戦没船でダイビングをするということは、様々な角度からモラルを持って接しなければならない事を僕は再三主張してきたのです。
戦死者の為にも、遺族の為にも、平和教育の為にも、そして僕らのダイビングフィールドを保全していく為にもです。
総体的に沈没船には有効期限があるということを改めて痛感しました・・・。
このエモンズにはあとどのくらい潜れるのだろうか?
完全に崩れる前にエモンズ調査は完了できるのだろうか?
アプローチするショップや皆さんが、ちゃんとルールとモラルを持って接してくれれば、その期限を少しでも延ばすことは可能だと思うのですが、そこまで考えてくれているダイバーは一体どのくらいいるのだろうか・・・?
一時の楽しみでさえあれば・・・、その時このレックで稼げるだけ稼げればそれでいいと言うのだろうか・・・?
レックダイブって虚しいダイビングなのだろうか・・・?
O2DIVE OKINAWA/旭潜水技研
http://www7.ocn.ne.jp/~o2dive
Posted by TAKEちゃん at 02:09│Comments(1)
│エモンズ
この記事へのコメント
ダイビングの術を磨くと同時にやはり内面を磨かなくてはいけないのでしょうね。日本の道徳教育が無くなった癌の転移がダイビングにも通じるのは悲しいことです。
もちろん、僕にしたって戦争経験なんてありませんが、そういうものへの敬意を払う事は誰に教わったわけでもなく身についていると思っています。これから、戦争を知らない世代のダイバーがどんどん増えていったら本当に恐ろしいことです。
以前、”師”は自分で選びたいという話を杉浦さんとしたことがありますが、旭潜水で「普通」とされるモラルが、他のショップでは「普通」じゃ無くアウトローな扱い方をされるということが、これからレックダイブが進歩していくときに大きな壁になるんでしょうね。
ダイビングひとつから、モラル、教育の話まで・・・奥が深いですね。
もちろん、僕にしたって戦争経験なんてありませんが、そういうものへの敬意を払う事は誰に教わったわけでもなく身についていると思っています。これから、戦争を知らない世代のダイバーがどんどん増えていったら本当に恐ろしいことです。
以前、”師”は自分で選びたいという話を杉浦さんとしたことがありますが、旭潜水で「普通」とされるモラルが、他のショップでは「普通」じゃ無くアウトローな扱い方をされるということが、これからレックダイブが進歩していくときに大きな壁になるんでしょうね。
ダイビングひとつから、モラル、教育の話まで・・・奥が深いですね。
Posted by せらぴぃー at 2008年11月17日 14:54
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