2008年08月04日

純国産 リブリーザー!

今から15~16年前、僕が当時働いていたダイビングショップがあった西オーストラリアから日本に一時帰国したことがありました。
その目的は、初の日本国産リブリーザー「GRAND BLUE FIENO」の導入を、当時のサービスで真剣に考えたからでした・・・。

純国産 リブリーザー! 純国産 リブリーザー!

FIENOとは商品名であり、システムはセミクローズドサーキット(SCR)で、いわゆる開放式(オープンサーキット)ではなく、循環式の半閉鎖式ダイビングユニットでした。
今でこそ、一般へのテクニカルダイビングの普及とともにリブリーザーやCCRというダイビングユニットが広く知られるようになりましたが、当時はまだ本当にマニアックな器材だったのです。
そんな時代、日本では世界に先駆けいち早く現在の重いダイビングユニットを逸脱すべく半閉鎖式のセミクローズドサーキットの開発と商品化を実現させていたのでした。

ユニット本体の重量は5.5kg。
専用の小型タンクとBCジャケットが装着され、総重量でもたったの9.6kg!女性が背負った状態で難なく飛び跳ねられる程度の重さでした。
当時から僕はこの軽さに大変魅力を感じていたのでした。

呼吸ガスは、今で言う「ナイトロックス」や「エンリッチドエアー」になり、背中に搭載された1.3Lの小さなアルミタンクに40%の酸素と60%の窒素の混合ガスを使用していました。

そしてなんと言ってもこのデザインの素晴らしさ!
ちょっとした未来系をイメージさせるような抜群の流体デザイン!
当時の通産省のグッドデザイン部門賞も受賞したほどでした。

使用方法は通常のオープンサーキットやAirではないので、新たに講習を受けなければなりませんでしたが、そこに対しても専門指導団体として「REDIS」という指導団体を立ち上げ、Cカードの発行も行っておりました。
国内販売総代理店としては東京日産自動車が代理店となり、本格的なリブリーザーダイビングマーケットを日本国内だけではなく世界に向けて着実に築き上げていました。

純国産 リブリーザー! 純国産 リブリーザー!

しかし時代が少し早かったのです・・・。
そして遅かったのです・・・。

当時ではこの次世代ダイビングスタイルと、リブリーザーユニットの価値と将来性に気付くダイバーは殆どいませんでした。
また、経済的に日本国内のバブル期がちょうど弾けてしまった時期ということもあり遅かったのかもしれません・・・。
FIENOは次第にその勢いと影が薄れていき、いつしか記憶にも忘れ去られついに消滅してしまいました。

僕は当時FIENOの開発者の方と千葉県のダイビングプールでFIENOのテストダイブをさせて頂きました。
初めての感覚、吸っても吐いても浮いてしまうリブリーザーの独特な感覚に最初手間取ったことを今でも覚えています。
そして理屈よりも何よりもとにかく軽くてカッコがイイ!
ただ、まだまだ開発の余地はあるといっていましたが、エアーバッグに吐いたガスを溜めるため、吸気よりも排気にかなりの抵抗があり、オープンサーキットで慣れてしまっている方はちょっと苦しさを感じる部分もありました。
しかしそれも慣れれば苦にはならず、いつしか不思議な静けさの中でのダイビングが約束されました。

今では世界中で、SCR、CCRを含め様々なリブリーザーがびっくりするほど数多く登場しています。
もしあの時、FIENOが日本で完全にブレイクして定着していたなら、日本のダイビングシーンと技術は確実に変わっていたでしょう。
今では世界をリードするトップクラスのリブリーザー大国となっていたかも????

また、あれ以来、未だかつて僕はFIENOを超えるほど魅了されるデザインのリブリーザーを見たことがありません・・・。
日本人の持つ美意識的なものがそこにも詰まっていたのでしょう。

もったいない!本当にもったいない!こんな日本の尊い技術と製品が埋もれてしまうなんて・・・。

因みに、当時の本体ユニットの販売希望小売価格は29万5千円!
今思えば、メチャクチャ安かったんじゃないでしょうか・・・!

FIENO・・・、もう一度復活できないもんでしょうかねー!



O2DIVE OKINAWA/旭潜水技研
http://www7.ocn.ne.jp/~o2dive



Posted by TAKEちゃん at 15:22│Comments(5)
この記事へのコメント
Googleでの検索でたどり着きました。fienoのデザイン開発に担当者として携わっていた者です。内容を読んで、とても懐かしく、当時のことを思い出しました。
私も自身のブログの2007年の記事で「半閉鎖式スクーバシステムのデザインについて(http://t2taro.blog.so-net.ne.jp/2007-07-05-00036)」という話を書いておりました。お時間のある時にでも見ていただければ幸いです。
Posted by テツタロウ at 2009年11月14日 23:22
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コメントありがとうございます。

開発担当関係者の方から書き込みいただけて大変光栄です!

またいつか、あのデザインで中身をもっと進化させたCCRで、是非復活させたいものですね!

フィーノは本当にかっこよかったです!

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Posted by TAKE at 2009年11月16日 11:05
TAKEちゃんさま、当時「千葉の海でテストしてる…」と、何度も聞いていたのですが、それを担当されていたのですね。私もオープンウォーターを持っていたので、板橋の潜水プールで、量産試作を使ってテストに参加したことが想い出されました。
当時は今のように3DCADでのデザインが無かった時代だったので、現在であればもっと効率よくできたのでは…とも思ったりしています。
あの頃は、デザイン事務所の一担当者だったのですが、いつの日かCCRを再デザインしてみたい…と思っています。また、ブログを読みに寄らせていただきます。取り急ぎ。
Posted by テツタロウ at 2009年11月16日 23:17
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いやいや私は開発には一切関係しておりませんでしたが、千葉でテストダイブを1度させて頂いた程度です・・・。

しかし当時は逆に3DCADがまだなかったにも拘らずで、あのデザインですからねー・・・・。
凄いとしか言いようがありません・・・。

是非近い将来CCRデザインでご活躍される日を夢見ております!

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Posted by TAKE at 2009年11月19日 00:39
今頃になってふと思い出しまして、検索しましたらこちらさまの記事に出会いました。私は名前こそ公開はできませんが、このフィーノの原理モデルになる装置を開発したものです。私が開発した装置は全部で7号機まであり、もっとも安定的に機能が発揮され、デザイン化が進んだ7号機がフィーノの原型となっています。しかし当時最高のパフォーマンスを発揮しましたのが5号機で、フィーノのサイズや重量の約50%でした。完全装備重量で約5Kg、潜水時間では深度20mくらいで約35分程度でした。閉鎖循環や半閉鎖循環式においては潜水可能時間は毎分のガス供給が定量ですので、潜水可能時間はおよそ潜水深度に関わりません。残念ながら5号機は無駄をそぎ落とし性能を上げ過ぎて一般のスポーツダイビングには不向きであろうとなり、はずされてしまいましたが。
さて、このフィーノに関して技術的にもっとも難しかったのがマウスピースユニットと、交換式のエアバッグ、さらに回路内に浸水した際の自動排水機構です。本来軍用で開発され、一般には非公開で世界の海で使われてきた装置を一般スポーツ潜水用に転用したものですから、誰がどのように使っても安心して安全に使用できるようにしなければなりません。フェイルセイフであることが必須であるのです。
とか書いていますと、当時のことがよみがえってまいります。
残念ながら私は原理開発が完了した段階ではずされてしまい、直後から一切潜水にかかわることがなくなりました。が、当時トップを走っていた本プロジェクトのリーダーY・F氏はものすごいパフォーマンスを発揮しここまで実現されたのだと思います。あれから25年経ちましたが、今の私であれば携わった多くの方々の本気の取り組みがよくわかります。今は他界されたと聞いている私の後を引き継いだS・M氏やT氏も大変であったことでしょう。開発とその商品化とは現場がまったく違うのですから。

私が初めて開発した半閉鎖循環式潜水用呼吸装置(当時1号機と呼んだ)は、AGAインタースピロ社の潜水用フルフェイスマスクにDAVATOR・MkⅡのダブルタンク、純酸素対応の一次レギュレータに工業用精密ニードルオリフィスを組み合わせ、呼吸回路は塩ビの水道管と洗濯機用の蛇腹排水ホースの組み合わせ。炭酸ガス吸着剤には軍用のソーダソーブを転用し、手製の高圧混合空気(150気圧までしか上げられなかった)を充填して実現したものでした。パフォーマンスは装備重量20㎏(だったかな)深度40mで最大12時間超の潜水を可能(理論上)にしました。(実際にはドライスーツを着込んでも、温水循環システムがなく冷え込んでしまうし、減圧スケジュールを組めないので実施はしませんでしたが・・・。)

すみません、なんだかいろいろ思い出されて書き込んでしまいました。もう25年も前のこと、時効と思って見逃してください。
Posted by KK at 2017年11月14日 09:10
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