今から約20年前くらい前だったかな・・・、「グランブルー・フィーノ」というセミクローズドサーキット式の日本製リブリーザーが存在しました。
オープンサーキットとは違う、そんなダイビングユニットのシステムが一体どういう仕組みになっているのかという技術的な事よりも何よりも、兎に角「泡が出ない」(厳密にはちょこっとづつ出ます)、「軽い」「カッコイイ」という事だけで、当時僕はものすごい魅力を感じていました。
実際、実物を見てみると、その3つの要素の中でも、特に斬新的な近未来を髣髴させるようなデザインが"超"がつくほどかっこよかった・・・!
実際、当時の通産省(現在の経済産業省)のグッドデザイン部門賞を獲ったほどの工業製品でもあもありました・・・。
当時、たまたま縁があってそんな国産リブリーザー・フィーノの開発技術の一人の方にダイビングプールでテストダイブさせてもらったことがあります。
その事を以前のブログにちょこっと紹介したのがきっかけで、当時のデザイン開発に携わった方から連絡もいただき、ブログ上でそんな話題で一時盛り上がったことがあります!
そして、またまた最近では、現在デザインを勉強されているという方からも連絡があり、制作テーマを探していたところフィーノの存在を知り、一気に惚れ込んでしまったとの事・・・。
当時のフィーノの事を細かく色々調べたいが、何せ古いことなので他に資料が見つからないので、とこちらに連絡があったのです。
偶然にも、当店には、まだ当時のカタログ一式やテキスト類が1セットだけそのまま残っていたので、それをコピーして差し上げました。
その代わりと言っては何んだけど、僕が現在所有しているオプティマというリブリーザーユニットをデザインモチーフに提供するから、新しいオリジナルデザインをしてみないかという申し出に、是非!と喜んでいました!
実用的かどうかは別として、今後のMyリブリーザー・オプティマのデザインの可能性が広がると面白いなーと、今から楽しみです!
さて、あの頃、なぜ僕がフィーノに目を付けたのかというと、当時僕はオーストラリア政府から特別許可をもらってクジラ(ミナミセミクジラ)の生態調査をしていた関係で、水中を至近距離からどうしてもクジラの出産子育てシーンを観察したい意向がありました。
特定のエリアで、出産、子育てを行い、常にナーバスになっている母クジラにとって、ダイバーの接近と呼気から出る超音波はある意味外敵そのものでした・・・。
なので、途中からはスノーケリングで行っていたのですが、スノーケリングでは限界もあり、どーしても水中に滞在していたいとの事で方法を色々模索していたところに、偶然にもフィーノの存在を知ったのでした。
はじめ、開発担当者からユニットのシステムと理論の説明を受けたのですが、当時の僕にはさっぱり言っている事の意味が判らずちんぷんかんぷん・・・?
意味不明になっている僕を見て、担当の方が「論より証拠!まずは潜ってみましょう!」と、そのままダイビングプールに連れて行ってくれたのでした。
プールサイドで、初めてフィーノを背負って感激です!
何だこの軽さは!
器材を背負ってる感覚が全くありませんでしたね。
ダイビング器材がこんなに軽いなんて・・・、本当に感激でした!
そして感激している間もなく水深6m位あるダイビングプールに、いきなりエントリー!
続いて、「潜降!」と言われても、オープンサーキットにしか慣れていない自分にとって、吐いても吐いても浮力が減っていかないリブリーザーにてんやわんや・・・。
全く沈めません・・・。
がんがんウエイトを付け足されて、何とか潜降・・・。
オープンサーキットと違い、吸ったり吐いたりで浮力の調整が取れない初めての新感覚に慣れるのにちょっと時間がかかりました・・・。
でも、その感覚とコツに慣れてくるとやっと何とか浮力コントロールが取れるようになり、様々な部分に意識が行き渡るようになっていきました!
そーすると、段々楽しくなってくるのですが、慣れてきて呼吸が少し安定してくると、今度次第に気になってくるのが「呼吸抵抗」でした。
吸気そのものには特に大きな違和感は感じないものの、姿勢によってどーも排気に抵抗を感じる・・・。
水平状態で泳いでる時はまだいいのだが、上体を起こした状態になると途端に排気が苦しくなる・・・。
気にならない方は、恐らく気にならない程度のことなのかも知れないが、通常かなり激しい環境で潜る僕にはこの若干の変化だけが特に気になって仕方がなかった。
今まで、クジラには計3回襲われているのですが、その恐怖たるやサメの比ではありません・・・。
クジラはやはり知能が高いせいなのか、サメみたいに一気にというのではなく、時間をかけてジワリジワリとにじみ寄るような、心理的にもダメージのかかるような攻撃を仕掛けてくる事があるので、こちらとしては抑えようにも心理的に動揺する呼吸の乱れを抑えることが難しいのです。
フィーノを使用したい目的意識がはっきりしていただけに、そこにおいてのフィーノの排気抵抗は僕にはちょっと致命的に感じたのでした・・・。
今となれば、カウンターラングの位置や素材の若干の改善でクリアできたのではとも思えるが、当時ではそんな知識も理論もわかるはずもなく、実際インフラの問題も大きくありましたが、製品としてのそこだけがフィーノの購入を躊躇させる原因となったのでした・・・。
デザインよし、重量よし、話題性ばっちりだったんですけどねー・・・。
しかし今思えばやっぱり買っておけばよかったなーと、ちょっと後悔してますが、でもダイビングプールとはいえ、実際フィーノを背負って潜れたことは今となれば貴重な経験だったのかもしれません・・・。
今だからこそ、もう一度フィーノを使って今度こそ実際の海で潜れたらなーと思ってます・・・!
ほんのちょっとだけ改造すれば、今でも使えるんだよなー・・・。
O2DIVE OKINAWA/旭潜水技研
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