【圧壊】・・・

TAKEちゃん

2023年06月23日 23:30

海や水に携わる仕事をしているだけに、自分に訪れる死因で最も怖いと思うのは「溺死」と「」圧壊死」・・・。

正しくは圧壊死という言葉自体は存在しないのかもしれないけれど、圧力で潰される圧壊による死の直面というのがとても恐ろしいですね・・・。

今回大西洋で起きた民間会社の潜水艇ツアーで起きた事故・・・。

恐らく圧壊が原因だったであろうという悲惨な事故です・・・。

溺死は一般の我々にも常に身近に存在する死因だと思いますが、圧壊による生命の危険性というと、通常一般にはまず訪れる事のない出来事だと思います。

我が国の中だとそれに直面するとしたら海上自衛隊の潜水艦乗りの方達か、JAMSTECの関係研究者などでしょう・・・。

JAMSTECの所有する「しんかい6500」はその名の通り6500m級まで潜れる友人潜水艦ですが、フランスの「トリエステ」は11,000mまで潜っています。

日本では無人潜水艦でしたらトリエステと同じく11,000mまで潜っていますが、どちらも同じ水深なのはマリアナ海溝の最深部で同じ場所に潜ったからです。

「しんかい6500」に至っては、既に1500回以上の運用実績があり無事故のはずです。

今回のアメリカの民間会社のTAITANは5回目の潜航で圧壊した・・・。

その違いは何なのか?

色々トラブルはあったものの実際4回は3800mまで潜っているのに5回目で潰れた・・・。

しかも計算してみると、タイタニックまで到達できず潜航中のおおよそ3400m~3500m地点で既に潰れた事になります。

4000mまで大丈夫だと言っていたのに3400m~3500mあたりで・・・、つまり「メンテナンス」「修理」「補修」を含む「運行保全管理」というケアが杜撰だったという事だと思われます・・・。

チタン合金だろうがカーボンファイバーだろうが、想像を絶する力が加われば物性の変化や金属疲労など必ず起こします。

1回目~4回目の圧力との戦いで「傷を負い」何とか耐えていたけど、5回目でついに耐えられなくなったという事じゃないかと思うわけです・・・。

各国の大深度潜水艇がほとんど無事故で、それこそJAMSTECのしんかい6500のように1500回も無事故というには、やはり髪の毛1本にも満たないキズやクラックも絶対見逃してはならず、大事故になる前に必ず点検検査保守管理などが常日頃、完璧に機能していなければ挑んではいけない世界と挑戦だという事でしょう。

それを維持し続けるにはもはや国家レベルじゃないと難しい事だと思いますが、やっちゃったんですねあの会社は・・・。

自動車事故にしても潜水事故にしても、起こってからじゃ遅いはずなのに、起こる・・・・。

それらの事故を振り返ってみると必ず原因が見つかります。

しかもその原因というのは殆どが単純で些細な事だという傾向があります。

つまり本来なら誰でも防げたはずなのに防げなかった・・・。

それは一体なぜなのか?

という事を考えていくとおのずと答えが見つかります・・・。

水を飲みこんで呼吸が出来なくなるとどうなるのだろうか?

恐らく一瞬の驚きと苦しみだけで、その後瞬間的に気を失なったまま亡くなると思います。

圧壊は恐らく、金属や隔壁がミシミシきしむ音がし出して、水が一部から噴水のように流入した後、その後は空間内ごと一気に真空パックのようにぺっしゃんこに潰されるので、苦しいと思う間もなく一瞬で生命が絶たれるのだろうと想像します・・・。

いずれにせよ、水中に携わる者だけに人よりも具体的かつ詳細な想像がつくだけに水中で亡くなる事には物凄い恐怖を抱きます。

今回とても心に残る残念な事故でしたが、分野は多少違っても「保守」という事の常用性を改めて痛感した出来事でした・・・。



旭潜水技研
http://asahi-scuba.jp

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